院長ブログ「こころの総合診療医」

内科や外科など、からだ(身体)を診る診療科では、たとえば循環器内科は心臓を診る、整形外科は骨を診る、というように、「臓器」を診ることを専門とする専門医(スペシャリスト)が増えてきました。

しかし、臨床現場では、専門外のことはよく知らない専門医が増えることによって、「患者たらい回し」問題のように、現場のニーズに合わなくなってきました。
そのため、医学のあらゆる分野についてまんべんなく、必要な臨床知識と技能をもつ、ジェネラリストとしての「総合診療医」が必要とされるようになりました(『総合診療医ドクターG』というNHKの番組では、総合診療医の実際が紹介されています)。

しかし、総合診療医も万能ではありません。こと、心に関する領域となると、広大な分野となります。心も体も全ての問題に対応できる医師はいません。

振り返って、私たち、心療内科医・精神科医という、心を診る医師は心に関する問題に「総合的に」対応できているでしょうか?

たとえば、大人を診療して「発達障害」と診断しながらも、実際には子どもを診療した経験がない(実際に「発達」していく子どもたちを診ていないのに発達の問題を診断するという問題)とか、その逆に「15歳までしか診ない」児童精神科医もいます(思春期になり急に放り出される患者さんの問題)とか、老人は診ない、トラウマは診ない、アルコールやギャンブル依存症は診ない、などなど、心を診ながらもその領域を狭く限定している心療内科医・精神科医は多いのです。

ある人がどういう素質を持って生まれ、どういう育ちをして、どのような社会状況の中で、どのように発病してどのように回復していくか、どのように老いていくか、そういう流れを見ながら治療的に関わる中でしか見えてこないものがあるのです。
それこそが、「こころの総合診療」だと私は思っています。

私は20年以上の診療経験において、いつもそういう意識を持って仕事をしてきましたが、いまだに足りないことも多いと思っています。私の能力はさておいても、「こころの総合診療」の領域はそれだけ広大なものなのです。

このサイトでは、「こころの総合診療」の実際とは何か、そこから見えてくる問題やその解決法は何か、など、具体的に書いていきたいと思います。

 

心療内科の臨床は、医師が知識と経験を総動員し、時には医師の人生を賭して望むことさえある真剣勝負の場です。私がその場で得た発見・驚き・喜び、そして哀しみや悔しさをも、筆の及ぶ限り綴っていきます。