カフェインと心の病について

日頃の診療でカフェインについて注意を促すことが増えました。

カフェインは、コーヒー、緑茶、ウーロン茶、紅茶、コーラ、栄養ドリンクなどに入っている成分ですが、カフェインは一つの化学物質であり、もっと言えば脳を刺激する「薬物」です。カフェインは、一般に「覚醒剤」と呼ばれているアンフェタミン・メタンフェタミン(こちらはもちろん違法な薬物です)と同じく、脳を刺激して覚醒を促す作用があります。私たち精神科・心療内科の専門用語では、カフェインはアンフェタミンと同じく「精神刺激薬」と呼ばれます。

カフェインにはそういう刺激・覚醒作用があるので、「眠気覚まし」「集中力を高める」という目的で摂取している人も多いと思います。確かに、運転に集中する時などに適量のカフェインを服用すると注意力が高まって良いこともあります。ただ、カフェインの摂取量が多くなると、頭痛、不安、抑うつ、不眠、吐き気、下痢などを起こします。カフェインを大量に摂取すると心臓や腎臓などにも負担を与えるため、時には中毒死に至ります(昨年日本で若い人が中毒死したというニュースがありました)。

また、他にも注意しておくべき大事なことですのが、カフェインは覚醒剤(アンフェタミン・メタンフェタミン)と同じく、依存性のある精神刺激薬ですから、多量に飲み続けていた人が急に止めるといわゆる禁断症状が生じる可能性があります。

カフェインにはそうした副作用があるので、パニック障害や不眠症、うつ病の方には病状を悪化させることが多いのです。実際、カフェインレスの生活を心がけただけで不安・パニック症状や不眠、抑うつ症状がかなり良くなる方が多くいます。

しかし、カフェインについては、脳を刺激して覚醒させる効果ばかりではなく、リラックス効果もあります。「コーヒーブレイク」として休憩時間にコーヒーやお茶を飲んでいる人もいますし、時には寝る前にコーヒーを飲むとよく眠られる、という人もいます。

同じ量のカフェインを服用しても不安や不眠、下痢などを起こす人がいれば、リラックス効果で眠くなる人さえもいるわけです。いったいその違いはどこから生じるものなのでしょうか?

最近の研究では、遺伝子によって、カフェインで頭がすっきりして気分が良くなるか、逆に不安になるかが決まる、とわかりつつあります。日本人の4人に1人はカフェインを150mg摂取するだけで不安定な気持ちになる、というデータがあります。(『欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』奥田昌子著、講談社ブルーバックス

カフェイン150mgは、コーヒー1杯、もしくは紅茶やウーロン茶500mlに含まれる量です。この程度の量で気分が悪くなる人が日本人の4人に1人いるわけですから、結構多くの方が体質に合わないカフェインを服用していることになります。その事実は、気分や体調が悪くなることをわかっていてカフェインを摂取している人がかなりいることを示します。つまり、カフェインで脳を強制的に覚醒させ、無理をして仕事や勉強に向かっている人がかなり多くいるということです。ただでさえ普段から頑張っている人が、カフェインを摂取することで更なる頑張りを可能にしているわけですが、そんな無理を続けていれば早晩心身にガタをきたすことになります。

カフェイン摂取で脳を覚醒させるのは、普段運転しない人が長距離運転をする時など、たまにしかない場面だけに限る方が良いでしょう。

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