強迫性障害(強迫神経症)

強迫性障害(強迫神経症)は、自分でもばかげているとわかっていても、ある考え(自分の手が「汚れている」、自分や家族が「死んでしまう」、誰かに「危害を加えてしまう」など)が、自分の意思に反して何度も頭に浮かび、払いのけることができなくなる「強迫観念」と、ある行為(手を何度も洗う、ガス栓や鍵を何度も確認するなど)をしないと気がすまなくなる「強迫行為」があらわれ、生活に支障をきたす病気です。誰もが少しは、「鍵をかけたか」「車で何かをひいてしまったかも」などと不安になったり確認したりすることがありますが、その程度が度を超して生活や仕事に支障を来たしているのが強迫性障害の状態です。
強迫行為は、本人が不合理だとの自覚(病識)がありますから、「同じことを繰り返す」だけで強迫性障害との診断にはなりません。強迫行為のように見えても病識がない場合は、統合失調症や自閉症、認知症などの可能性があります。

強迫性障害の症状

・不潔恐怖

汚れや病気の感染への恐怖のため、手洗い、入浴や消毒を繰り返します。公共施設の手すりやつり革など、「汚い」と感じるものを触られなくなります。

・加害恐怖

「誰かに危害を加えた、加えたかもしれない」という強迫観念から、車で引き返して確認したり、警察や家族に事件がなかったかと確認したりします。。

・儀式的行為

外出前や後の着替えやお化粧、持ち物確認など、自分が決めた手順で行わないと、恐ろしいことが起きるという強迫観念から、不合理で複雑な儀式的行為を行います。同じ行為を自分の決めた縁起の良い数字の回数だけ行うとか、物の置き場所にこだわります。物の置き場所が乱れるとパニックを起こすことがあります。

強迫性障害には、症状を家族にさえ秘密にして一人で悩んでいる人と、家族や友人らを確認行為に巻き込む人がいます。後者の場合、大切な人間関係にひびが入ってしまうこともあります。

強迫性障害の原因

過去には、生い立ちや生育環境、生活上の出来事(ライフイベント)の影響が重視されたのですが、現在では脳の異常、体質因の関与が考えられています。いまだに原因ははっきりしなくとも、下記のように治療法がかなり確立されてきた疾患です。

強迫性障害の治療

薬物療法と認知行動療法が中心です。

薬物療法:SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)がかなり有効です。非定型抗精神病薬を併用することも効果的なことが多いです。強迫性障害の患者さんは、薬を服用することで「人格が変えられる」恐れを持たれる方も多いのですが、決してそのようなことはありません。また、「薬に頼る」ことが自尊感情を傷つける方もおられますが、薬を上手く利用し、下記の認知行動療法を努力して行っていけば、そのうちに症状も軽くなり必要な服薬量も減っていくものです。

認知行動療法:まず、強迫観念の不合理性につき検討します。どこがどう「汚い」のか、自分が他人に「危害を加えてしまう」可能性はどの程度あるか、などにつき検討します。確認行為をしなかったらどういうことがどのくらいの確率で起き得るのか、と考えてみるのも有効です。ここまでは「認知療法」です。
その次に大事なのが、「行動療法」、中でも「曝露反応妨害法」です。これは、患者さんがどうしてもやらずにはいられなかった強迫行為をしない、という行動療法です。
たとえば、「汚い」と思う物に触れてもそれが強迫観念だとわかれば洗わないでおく、鍵かけをもう一度確認したいと思っても鍵をかけた記憶がちゃんとあれば引き返さない、などです。不安な状況において今までいつもやってきた強迫行為を止めることは、最初は逆に強い不安や苦痛を引き起こすこともありますが、少しずつ、段階的に行っていくこと、強迫行為に代えてどういう行動をすれば楽になるかを考えながらやっていくことで、不安はだんだん和らいでいきます。

強迫性障害の方は、俗に言う「潔癖」「完全主義」の傾向がある方も多く、症状を治そうと一生懸命で症状のことばかりに注目するがあまり、かえって治りが悪くなることがあります。症状に振り回されずに生活や仕事ができるところがあれば、そこを増やしてさらに充実させるようにしていくことは、結果的に強迫性障害を治していくことにつながります。

<関連記事>

「巻き込み型強迫」と愛着の関係:強迫症の人と「甘え」

懺悔強迫・加害恐怖と強迫性障害(強迫神経症)

『自分でできるスキーマ療法ワークブック』

『あした死んでもいい片づけ』

ページの先頭へ戻る