不眠症(睡眠障害)

当院より、不眠症についてご説明します。

不眠症(睡眠障害)に悩む人が増えています。

24時間社会になりました。交代勤務で働く人も増えました。夜遅くまでテレビやパソコンの画面を見る人も増えました。その結果、日本人の平均睡眠時間はこの30年ほどで1時間ほど短くなり、世界中でも最も短い国の一つです。

健康に必要な睡眠時間は、個々人で異なります。1日に3,4時間眠れば大丈夫、という人もいますが、それはまれです。一般には1日7〜8時間程度が必要です。「不眠症」と診断する時には、睡眠時間だけではなく、起きた時の熟睡感があるかどうか(前日の疲れがとれたか)、日中に眠気がなく、仕事や勉強に集中できているか(脳がしっかり動いているか)、が大事なポイントです。

不眠症は、うつ病を引き起こします。うつ病になると、朝から体がだるく、仕事や家事に身が入らなくなり、食欲がなくなったり、頭痛や動悸、血圧上昇、めまいなどの体の症状も生じます。また、不眠症が糖尿病や高血圧症を悪化させることもあるので要注意です。

不眠症は、生活習慣を直すだけで治ることが結構あります。一番よくあるケースは、飲酒です。眠れないからお酒を飲む、という人は多いのですが、これは全くの誤りです。確かに、飲酒すると寝つきは良くなるのですが、睡眠の質はかえって悪くなって、夢が多くなり、夜中や早朝に起きてしまうようになります。飲酒をやめるだけで不眠症が治る人が多々います。コーヒー、緑茶、栄養ドリンクや市販鎮痛剤などに入っているカフェインも不眠症を引き起こします。少なくとも夕方4時以降はカフェインを摂らない方がいいです。

昼寝についても注意が必要です。昼寝をするならば、午後に30分以内で、寝床に入らずにソファーなどで浅く眠ると、夜も寝つきやすくなり、効果的です。

私たちの体の中には「体内時計」があります。それはおよそ25時間リズムになっています。つまり、自然にしておくと毎日1時間起床が遅くなるのです。それを私たちは、学校や仕事の予定で修正しているのです。特に秋から冬は、リズム障害が起きやすい時です。朝は定時に起きて、できれば朝日を浴びて脳に刺激を与えて体内時計をリセットすること、これは不眠症だけでなく、「冬季うつ病」という、冬になるとうつ病の症状が出てくる人の予防に大事です。

寝つく前の2時間ほどの間をリラックスして過ごすことも大事です。悩み事を考えたり、難しい内容の勉強、メールのチェックをするのは日中の早めの時間にしておいて、晩の時間帯は、勉強ならば暗記ものや復習に当てること、テレビ、パソコンや携帯電話などの画面を見ることは避け、軽い内容の本や画集を見たり穏やかな音楽を聞くこと、がお勧めです。

生活習慣を直しても不眠症が治らなければ、心療内科や精神科での治療を勧めます。一口に不眠症と言っても、治療薬は、いわゆる睡眠薬(睡眠導入剤)に限りません。漢方薬、抗うつ薬、抗精神病薬などを、状態に合わせて調整するのは、私たち精神科専門医の得意とするところです。また、心の悩みが原因の不眠症ならば、それを解消して不眠症を治すためのカウンセリングについての相談も受けつけています。