双極性障害(躁うつ病)

当院より、双極性障害(躁うつ病)についてご説明します。
双極性障害(躁うつ病)は、気分が高まったり落ちこんだりして安定しない病気です。たんなる「気分のムラ」程度ではなく、ある期間続く「躁状態」と「うつ状態」を繰り返す病気です。この病気の原因は脳の異常状態であり、性格や心がけの問題ではありません。

躁状態とは

下記のような症状があります。

  • 気分が高まり、いろいろなことがしたくなる
  • 眠らなくても平気になる
  • 「何でもできる」気になる、気が大きくなる
  • おしゃべりになる、あちこちに手紙やメールを送る
  • 自分が偉くなったような気がする
  • 怒りっぽくなる、攻撃的になる など

行動面では、急に新しい趣味を始めたり、お金をたくさん使ったり(ギャンブル、高価な買い物が多くなる)、異性関係が放逸になったり、自己主張が激しくなりケンカが多くなったりします。唐突に退職したり起業したりすることもあります。
周りの人から見ると、「普段とテンションが全然違う、テンションが高い」「急に人が変わったみたい」との違和感があります。軽い躁状態(軽躁状態)ならば周りを明るくさせて一緒に楽しめることもありますが、激しい躁状態になると周りの人は驚いて困惑してしまうばかりになります。

うつ状態とは

  • 気分が落ちこむ
  • 眠れない、もしくは過剰に眠る
  • 食べたくない、味がしない、食欲がなくなる
  • 自分に能力がないと思う、自信が無くなる
  • 何もしたくなくなる、おっくうになる
  • 疲れやすい
  • 楽しめなくなる、何事も「うっとうしい」
  • 死にたいと思う など

行動の面では、普段は簡単にできていた仕事や家事ができなくなったり、楽しめていた趣味ができなくなったり、笑いがなくなったり、友達との連絡をしなくなったり引きこもったりします。
周囲の人から見ると、表情に活気がなくなり、話していても悲観的な話題ばかりになったり、やたらと自分を責める発言が多くなったり、仕事の能率が落ちてミスが多くなったりします。

双極性障害(躁うつ病)の種類

激しい躁状態とうつ状態があるのが「双極性障害1型(双極1型)」、軽い躁状態とうつ状態があるのが「双極性障害2型(双極2型)」です。
1年間に4回以上、躁状態とうつ状態を繰り返す場合、「急速交代(ラピッドサイクリング)」型と呼ばれ、この場合は治りにくいことがあります。

双極性障害の診断

特にうつ病との鑑別診断が大事です。特に双極2型の人の場合、軽躁状態の時は自覚的には「調子が良い」と感じて活動的になり、うつ状態になると苦痛を感じて医者にかかる傾向があるため、双極性障害をうつ病と誤診してしまうこともあります。経過を見てから初めて双極性障害とわかることもあります。また、抗うつ薬の副作用(アクチべーション症候群)で躁状態のように見える場合もあり、注意が必要です。

双極性障害の治療

まず、患者さん自身が双極性障害という病気を正しく理解して受け入れることが大事です。特に、軽躁状態を自覚することができるようになると、気分の変動は小さくなり、症状の経過は良くなります。また、逆説的ですが、患者さん自身が「気分をコントロールしよう」と考えるよりも、気分の波はあるのは仕方ないとして、「気分屋さんで良い」と開き直る方が気分の変動は少なくなるものです。
ご家族が双極性障害を理解し、患者さんと一緒に病気への対処法を考えていくことも大事です。特に、うつ状態に入る時期には自殺の危険があるため、ご家族の見守りや支えが大事になります。
うつ状態の時には、認知行動療法も有効です。

双極性障害の薬物療法

双極性障害には、薬物療法が有効です。少し長期間にはなりますが、薬物療法を継続することにより、気分の変動は小さくなって安定していきます。
治療薬としては、気分安定薬(リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン、ラモトリギン)が中心となります。その他に、非定型抗精神病薬、ベンゾジアゼピン(クロナゼパムなど)も使われます。抗うつ薬は躁状態を招く場合があり、使用にはかなりの注意が必要です。

双極性障害は、正しく治療すれば長期的には経過の良い病気です。過剰に怖れたり悲観的になったりする必要はありません。