熱中症対策:過剰な水分、過剰な塩分に注意。特に不安症の方に。

今年の多治見はひどく暑いです。現時点で40℃超えした日が既に2日もあり、熱帯夜も続いています。暑さには慣れている多治見の人にも未曾有の暑さになっています。

テレビでは連日猛暑のニュースが報道されています。「屋内でも熱中症になります、冷房を使って」「こまめな水分摂取が大事です」「汗をかいたら塩分補給が必要です」「不要な外出は控えて」「命を守る行動をしてください」などなど。そんな報道を見ていると誰でも不安になりますが、特に不安症の人は熱中症を過度に怖れるようになります。

私のところに来られている患者さんは恐怖症や不安障害の方が多いので、熱中症のニュースを見て不安が強まり、テレビで言われる熱中症対策をやり過ぎるくらいまでしている方が多くおられます。暑い日に不要な外出を控えるとか、冷房を適度に使うとかの対策は良いのですが、水分と塩分を過剰に摂取されてかえって体調を崩されている方が結構いますので、注意が必要です。

水分について言うと、私たちの体は、過剰な水分を摂ると、体のミネラルのバランスが狂って「水中毒」の状態になりかねません。体がむくんだり、頭が重くなったりめまいや吐き気がしたり、時には意識がぼんやりしてしまうこともあります。この状態は、自覚症状的には熱中症の症状と似ているので、熱中症を怖れている方は、自分が熱中症になったと誤解して更に水分を摂って症状を悪化させてしまうことがあります。

では、熱中症と、水分の摂り過ぎ状態(水中毒)とはどこで区別していけば良いのでしょうか。それは、尿の量が目安になります。水分を摂り過ぎている水中毒の人は、頻尿になっていますし、水分が不足している熱中症の人は、尿の量が少なくなり、排尿の間隔も長くなります。ですから、状況にもよりますが、それほど暑くない屋内で軽作業程度の人でしたら、3-4時間に1回、通常量程度の排尿があれば、水分は十分摂れていると考えて、それ以上余分な水分を摂らないでよいでしょう。

水分過剰よりも問題なのが、塩分の過剰摂取です。この数年でしょうか、「塩アメ」などで塩分をチャージするのが熱中症予防に良いと宣伝されているので、過剰に塩分を摂っている人をしばしば見かけます。屋内で事務作業をしているだけでそれほど外出もしていないのに塩分を過剰に摂って気分が悪くなり、それを「熱中症」と誤解し、救急車を呼ぶ人もいます。

塩分については、炎天下や暑い場所で作業している人は大量の汗をかくので適度な塩分補給も必要ですが、それでもそんなにたくさんは必要無いはずです。特にこの岐阜県の人は普段から食事で摂る塩分が多く、食事が十分摂れているのに塩分を補給すると過剰になってしまいます。塩分が過剰になると、体の血液が「高張」(濃くなる)になります。血圧が上がります。腎臓にも負担をかけます。腎臓は血液から余分な老廃物を尿として作って排出する大事な臓器ですが、人間の腎臓はあまりに「高張」な血液からは尿を作れません。そのため、塩分を過剰に摂ると、尿が出にくくなることもあります。その場合、腎臓を傷めることになり、ひどい場合は血液中の老廃物が外に出なくなる危険な状態になります。
屋内で少し汗をかいた程度ならば、食事が十分摂れているならば、過剰な塩分は摂らず、麦茶(カリウムなどミネラル補給できます)くらいを飲んでおけば良いでしょう。どうしても塩分が気になるなら、ポカリスエットなどの経口補水液を2-3倍に薄めて飲む(原液ならポカリスエットと同量以上の水か麦茶を飲む)くらいで良いでしょう。