新型コロナウイルス危機と心理的サポートについて

新型コロナウイルス感染が猛威をふるい、私たちの生活に多大な影響を及ぼしています。

感染症による身体被害、経済的打撃、学習不安・・。数か月前、こんなことになるとは、まったく予想していませんでした。

予想していなかった出来事、“災害被害”による心理的影響の大きさは計り知れません。このようなとき、どのようなことが私たち心理専門職ができるサポートになるのか、と考えました。

災害被害についての心理的サポートについては、阪神淡路大震災の時から報告が盛んになったと記憶しています。その後より、災害被害に対応した心理職の人からの報告をよく受けるようになりました。その中で、ある心理職の方(Aさん)の報告を聞く機会がありました。

Aさんは職場の派遣指示により、心理職として“心理的サポート”を目的に、被災地に赴いたそうです。災害から間もなくの派遣でしたが、現地で何をどうすればよいかわからず、「カウンセリングは?」と現地の人に尋ねると、「そんなのはいらん!」と言われてしまったそうです。周囲を見渡すと、水道やガスなどのライフラインも危うい生活不安を抱えた人たちがたくさんいて、というか、そういう方しかいなくて、皆さんが一生懸命生活している・・・その状況に気づいたAさんは、自転車を借りて物資を運ぶお手伝いを始めたそうです。しだいにその中で声をかけたり、かけられたり、とAさんは被災者の方たちとのやりとりが増え、そこから初めて、被災者の生のリアルな不安や心配の声を聞くようになってきました。

Aさんは、「災害直後の状況ではカウンセリングよりも、どうやって生活していくかを考えるのは当たり前ですよね。」と話していました。確かに想像力が足りなかったと言えばそうかもしれませんが、私にはこの報告がとても印象に残っています。

Aさんもきっとそうだったと思いますが、心理職としての職務を求められると、“心理職として何ができるか”とだけ考えながらの対応になってしまい、そういう専門家意識がかえって被災者の気持ちを逆に傷つけてしまうこともあると思います。被災地のその場にいる一人の人間として、今何が必要なのか、役に立つのか、と考えたときに、必要な心理的支援がわかるのかな、と思います。

私自身、今回の緊急事態宣言の中、疎遠になっていた知人より葉書を送っていただきました。しばらく体調を崩されていたそうですが、「コロナが収まったらまた会いましょう」と書かれていました。

その知人は私を励まそうというより、少し体調が良くなったときに、私を思い出して葉書をくれたと思うのですが、普段遣いの気持ちがとても心地よく、1枚の葉書がこんなにエネルギーを与える力があるんだと、本当に嬉しく思いました。前向きな気持ちになることを後押ししてくれた出来事でした。

新型コロナウィルスについて、感染予防方法や感染者数、症状など、いくつかの情報が入るようになり少しずつ、この脅威を直視することができるようになってきました。明らかに次のステップに向かっていると感じています。

まだ当面の間、この脅威と付き合う必要がありそうですが、皆さんと一緒にこの脅威と向き合いながら、改めて私たち心理職はこの危機に対して「どんなことができるのか」を考えていきたいと思います。