認知行動療法(CBT)について

カウンセリングには、さまざまな手法がありますが、そのなかに認知行動療法(以下「CBT」)という治療法があります。うつ病などの気分障害や不安障害の治療などに有効とされ、患者さんの「物事・現象の捉え方(認知)」に着目しつつ、「どう捉え直すとより気分は良い方向へ変化するのか?」を、カウンセラー(治療者)と患者さん自身が考えていくことで、病状を改善していくものです。CBTにも、「認知再構成法」や「問題解決技法」などさまざまな技法がありますが、仕組みはシンプルで、患者さんやご家族にとってわかりやすい内容ですし、患者さんご自身が主体的に行うことができる点が、メリットとして考えられます。「自動思考」という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか?例えば、私たちは、職場や学校などで何らのミスをしたり、そのことで叱責を受けたり、対人面で対立することは多かれ少なかれ避けては通れないのではないでしょうか。そういった状況に接すると、「もう駄目だ」「自分は無能だ」「いつもこうなる」「何をやっても上手くいかない」という自動思考がオートマチックに浮かんでくることがあります。えてして「悲観的」で「自分が悪い」という自責的な見方であることが特徴的です。自動思考は決して誤った考え方ではないのですが、「その見方だけが正しい」という決めつけによって、アンバランスが起こっていることにまず目を向けます。まずは、「ほかの見方はないだろうか?」と冷静になり、「ミスはしたかもしれないが、次から気をつけよう」「叱責した上司も立場上、言わなければならないのだろう」「別に自分の全人格が否定された訳ではない」「人はミスをするごとに成長する部分もある」「ミスがないのは何もやっていないのと一緒だ(やや飛躍気味?)」などなど、多方向から状況をながめてみることで、「より適した思考パターン」を作っていく作業を通して、冷静な自分を育てていきます。ひょっとしたら、どなたか、「いつも良い気分で生きているよなあ」という風に見える人を想定し、「あの人だったら、こんな時、こう捉えるんじゃないか?」と、イメージしてみるとやりやすいかもしれません。患者さんは、それぞれに、ご自身のテーマ(スキーマ)を持っておられます。例えば、「自分はいつも失敗する」「人より劣っている」「生きていてもろくなことがない」など、「その物の見方(色眼鏡)で物事を見たら、どんなに良い状況でも、悪く捉えられてしまうし、気分も悪くなるなあ…」と、我ながら感心(?)するくらい否定的な物の見方であるものの、習慣化して固定しているせいで、スキーマが修正されるまでは、「これでもか」というくらい、悲観的に捉えられてしまうのです(「ポストが赤いのも自分のせい」みたいな?)。「思考記録」を記載しながら行う手続きでは、捉え方のバランスを整えることで気分が変化した様子を目で見て確認することもできるため、より実感としやすいでしょう。ただ、「いちいち書くのはめんどくさいな」という思考もあるでしょうし、苦痛となっては元も子もないので、「簡単なメモでもよし」というところから気軽に始めてみても良いのではないでしょうか。そういった意味でも、カウンセラーなど治療者という伴走者がいたほうが、よりモチベーションを保ちやすいと言えるでしょう。

わたしたちは、気がつくと、頭の中でくりかえし自分いじめをしているのかもしれません。「それはもうやめていきたい」と、少しでも思えた時が生き方の改善のきっかけとなることもあります。さらに、うつ病の時は、ただでさえ、行動する気力が減少していますが、「行動活性化」という技法を取り入れると、わずかでも以前より行動できたという出来事(お風呂へ入れた、散歩へ行けた、隣町へ出かけることができた)を記録し、「動けた自分」や「良い気分の変化」を冷静に眺めることで、以前よりも良くなった状態を実感しやすくなるでしょう。